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FDM方式(熱溶解積層法)の3Dプリンタは、熱可塑性樹脂のフィラメントを熱で融解し、ノズルから押し出し、積み重ねていくことで立体を作成します。
多くのプラスチック製品で使われているのと同じ熱可塑性樹脂が使える汎用性があります。しかし、実際には、熱変化で体積変化が大きい樹脂は、利用できません。そのため、安価で利用できる樹脂は、PLAやABSなどに限られます。
LCD方式(光造形)とFDM方式の比較
2019年は、光造形方式の1つである液晶パネルを使用したLCD方式の比較的安価なプリンタが発売されたことにより、LCD方式の3Dプリンタに注目が集まりました。
造形解像度が有利に働く分野では、LCD方式(光造形)が有効です。機械模型や動くおもちゃ、治具や部品の造形には、依然としてFDM方式のほうが便利と言われています。
LCD方式の利点
- 造形解像度が高いため、積層痕が見えにくくなる
パテで積層痕の段差を埋めたり、サンドペーパーやヤスリで削って、積層痕の段差を埋める後処理の手間が軽減できる
- 造形物のXY面の面積が増えても造形速度に影響がない
LCD方式の欠点
- 造形後、重合しなかったレジンの洗い流しと2次硬化が必要になる
- 液晶パネル、トレイのフィルムなど、消耗品が多い
- FDMで使用するフィラメントを比較し、レジンが高価。
FDMの利点
- 造形後、サポートを外したらすぐに利用できる
FDMの欠点
- 一般に造形解像度が低い。(30万円前後の機種には、造形解像度が高いものがある)
- 造形物のXY面の面積が増えるに従い、出力時間が増える
- フィラメントの管理が面倒(吸湿すると物性が変化する)
- 積層して形状を作成するため、層と平行に力がかかる場合は、壊れやすい傾向があります。
完成品の3Dプリンタ
箱から出した状態ですぐに使い始めることができる完成した状態で販売されているプリンタです。3Dプリンタで使う際の条件が調べられている専用のフィラメントが用意されており、フィラメントごとに出力条件を検討することなく、出力することができます。
3Dプリンタが詳しくない人でも、失敗が少なく、納得できる程度の解像度で出力できる装置は、30万円前後の機種になります。
予算が許せば、30万円前後の造形解像度の高い機種を選択することが有効な選択です。
代表的な機種として、以下の物があります。
FDM機にしては、高価ですが、フィギュアモデラーには、高い人気があります。
高精度出力が可能なFDM機です。低価格の機種でも、Qholiaと同価格帯です。2つのヘッドのうち使用するヘッドが下り、使っていないヘッドで作成したモデルを引っ掛けるのを防ぎます。
2つのヘッドそれぞれが、上下する機構は、さらに高価格帯のUltimaker 3でも採用されています。
業務用機種には、出力時に樹脂の中に炭素繊維を入れる機能を持つものもあり、強度が必要な部品を3Dプリンタで作成できる機種も存在します。
10万円以下の機種では、フラッシュフォージのアドベンチャー3の評価が高いようです。
FLASHFORGE ADVENTURER3
一部の使われいないヘッドが上に持ち上がり退避する機構を持たないディユアルヘッド機では、きちんとヘッドの位置が調整されていないと、出力に使っていないヘッドが、造形物を引っ掛け、出力が失敗する事例が多く発生したようです。
それに加え、サポート除去の作業が、軽減できる水溶性フィラメントの価格が高いことが原因なのか、ディユアルヘッド機を有効に活用した事例は、あまり見つかりません。
FDM方式(熱溶解積層法)の3Dプリンタ
高頻度で使用される方は、30万円超の価格帯の機種を選択していることが多いことに注意して下さい。耐久性の問題でしょうか?
3Dプリンタは、メンテナンスや故障による部品交換や調整が必要な装置です。保証期間が設定されていれば、その間に発生した交換部品は、無償提供される場合もあります。 また、英語でのやり取りが苦手な方は、サポートの手厚い国内代理店を探して、そこから購入することがよいと言われています。
低価格機種を快適に使用するには、改造や調整が必要になると考えておいたほうが良さそうです。 自分で行うには、機械だけでなく、電子回路やマイコンプログラミングの知識も必要になります。 通常は、そこまでの知識はないので、情報を発信している、ブログやホームページ、コミュニティの情報を頼りに、改造や調整を行います。
メーカーによっては、改造し、性能を向上させるアップグレードキットを適時提供しています。
キット品の3Dプリンタ
FDM方式の3Dプリンタには、完成品の3Dプリンタだけでなく、自分で組み立てるキット品の3Dプリンタ・キットが存在します。高評価の完成品の出力品質は、得られないと思います。しかし、安価に入手できる事に加えて、形状を出力するだけでなく、3Dプリンタの組み立てや調整、改造も合わせて楽しむことができます。
キット品の3Dプリンタは、キットに付属する部品をそのまま組み立てるだけではなく、組み立てたあと、改造パーツを3Dプリンタで出力し、パーツ交換により性能を向上させることがよく行われています。改造パーツのモデル・データが公開されていることが多いです。
最も有名で、広く使用される構造が「Prusa I3」です。
よく似た構造の類似品は、低価格で、購入できます。また、造形領域が広い大型の製品も存在します。
Original Prusa i3 MK3Sには、組み立て済みの製品も存在します。
デルタ方式の3Dプリンタは、造形時のヘッドの線速度を早く設定することができるため、造形速度を早くすることが可能ですが、プラットフォームが円形になるため、円柱形の形状では、大きく造形できるものの、直方体や立方体の形状では、造形物の出力サイズが小さくなる傾向があります。
うまく造形できないときの対応
3Dプリンタ・メーカーやスライサーを提供しているメーカーは、3Dプリンタで良好な出力をするための出力条件を調整するための説明を提供していることが多いです。
3Dプリンタ・メーカーやスライサーを購入した人が、自分で問題を解決できる情報と考え方を提供することで、利用者の満足度が向上するとともに、サポートチームの負荷を軽減することができます。 更に、利用するための情報を丁寧に提供することで、販売する3Dプリンタやスライサーが、利用しやすい状況であることを示すことができます。
このような、3Dプリンタを良好な状態で運用するための情報は、有効に活用することが大切です。
- 3Dプリンター印刷品質問題の解決方法
ALUNAR 3D PRINTERが提供している”Print Quality Troubleshooting Guide”という冊子の日本語訳
- GenkeiさんがSimplify3Dトラブルシューティングガイドの翻訳版を公開
- The Ultimate 3D Print Quality Troubleshooting Guide 2019
- 3D PRINT QUALITY TROUBLESHOOTING GUIDE FOR ORIGINAL PRUSA I3 PRINTERS
- 2019 Troubleshooting Guide to Common 3D Printing Problems | All3DP
- Print Troubleshooting Pictorial Guide
- Print Quality Troubleshooting Guide | Simplify3D
- A visual Ultimaker troubleshooting guide
- 3D Print Quality Troubleshooting Guide
溶解除去できるフィラメント
必要であれば、片方に水溶性樹脂やリモネンに溶解する樹脂を使うことで、サポート材の除去作業を低減できます。実際には、リモネンが高価なため水溶性フィラメントを溶かして除去できるサポート材として選択することのほうが、多いと思います。ただ、登場から時間が経っているので、新しく登場した機種と比較し、解像度が低い可能性があります。
HIPSポリスチレン
リモネンに溶解するABS用のサポート樹脂。ポリスチレン(PS)なので、プラモデルと同じ素材なのかな。
オートキャリブレーション(自動水平調整)とオートレべリング(自動高さ調整)機能がついている機種
出力する前に、テーブルの水平(自動水平調整)とヘッドのテーブルの間の距離(自動高さ調整)する必要があります。それを自動で調整してくれると、出力の準備作業が軽減され、出力の失敗が少なります。
研削性の良いPLAフィラメント Verbatim 3Dプリンター用 フィラメント
通常、PLAフィラメントは、研削性が悪く、紙やすりなどでの後加工は困難です。しかし、中には、研削性の良いフィラメントが存在します。 出力物の段差を紙やすりなどで削って修正したい場合には、使用する価値があるかと思います。
サクサク削れて接着できる140℃耐熱PLAフィラメント LFY3M
吸水したフィラメントの乾燥
シリカゲルで乾燥させる方法と安価なフードドライヤーを利用して乾燥させる方法があります。
インライン・フィラメント・ドライヤー
FDM方式の3Dプリンタで使用するフィラメントは、乾燥した状態で使用する必要があります。密閉容器に、シリカゲルなどの乾燥剤と一緒に保存したり、食器乾燥機やドライフード乾燥機、布団乾燥機を使ったフィラメント乾燥機の自作などで、フィラメントを乾燥させます。
効果の程は不明ですが、フィラメントを使用する際に連続的に乾燥させるフィラメント乾燥機も存在します。
フィラメント・エクストルーダー
FDM型の3Dプリンタでは、造形の失敗やサポート材など、フッラメントの残骸が大量に発生します。
フィラメントを自分で作るための押出機も販売されています。
モジャ対策
モジャとは、押し出されたフィラメントが付着せず、繊維状のまま、別途の上にスパゲティのように盛り上げられた状態になることです。
作成条件を探索したり、3Dプリンタの整備が必要です。
モジャ対策の例
- Z軸を0.1mm単位で詰める
- ABSならプレート加温
- 押し出し速度を下げる
- ヘッド速度を下げる
- ラフトを広く取る
- ノズル温度を高める
押し出されたフィラメントの太さを測定することも、条件設定の手がかりになるようです。フィラメントが吸湿すると粘性が低くなり、低い温度で押し出され、結果、押し出されたときの太さが変化します。そのため、吸湿すると、同じフィラメントでも条件の再調整が必要です。
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